◇よりよい教育環境確保のために

 福津市では、近年、福間中学校区において児童生徒数の急増が続いており、福間南小学校は令和3年度時点1,538人で、福岡県下一番の児童数となっています。福間小学校は令和10年度に約1,800人、この2つの小学校が進学する福間中学校は令和13年度に約1,800人と推計しており、全国に例がない過大規模校となる見込みです。福間中学校では令和3年度末に30教室の建替え校舎が完成しますが、令和6年度には教室不足が見込まれています。そこで、令和元年から新設校建設を含む学校教育環境整備の検討を進めてきました。

 新設校の市の方針としては、令和元年12月に庁議において決定しており、議会への報告や、該当校区の地域や学校へ説明にまわっておりましたが、令和2年の2月に市の方針がいったん保留となり、令和2年度、令和3年度においても協議を重ねてきました。

教育委員会のこれまでの方針

 この検討においては、単なる増築や数合わせの校区再編ではなく、子どもの豊かな学びのための環境整備に重点を置いて進めてきており、解消のためには小学校と中学校の両方の建設が望ましいということは当初から変わっておりませんが、本市の財政状況を踏まえた最善の策として、福間中学校区内に中学校を1校建設し、小中9年間の学年の区切りを5-4制にすることで9年間を見通した一貫性のある教育の実現と、小学校の過大規模の緩和も併せて図ることをめざし、教育委員会の方針としていました。

時間の経過により変化してきている点

・当初予定していた新設校の令和6年度開校が間に合わない

・西福間5区の宅地造成による人口増加。具体的には未就学児が500名程度になっており、近い将来、福間小学校の児童数が急増する見込みになっている。

・「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案」が令和3年3月31日に成立し、小学校の学級編制の標準を5年間かけて計画的に40人(小学校第1学年は35人)から35人に引き下げることになった。

・福津市内の特別支援学級数が急増している。

・以上のことから、複数の学校で教室不足が発生するため、増築が必要。

教育懇話会への追加諮問・追加答申

 時間の経過により状況が変化してきており、「新設校が1校でなく複数校の場合」や「校区等を含む様々な諸課題等」についての審議をいただくため、福津市教育懇話会へ、前回の諮問・答申に加えて「追加諮問」することとしました。

 以下の5点について議論し、特に(3)「複数校新設の場合の学校種」について学校現場の諸課題を詳細に審議いただき、追加答申を受けています。

(1)小中一貫教育とコミュニティ・スクールの方向性

(2)新設校の必要性と学校の価値、及び留意点

(3)複数校新設の場合の学校種について

(4)校区再編に関わる諸課題

(5)今後の進め方について

〇福津市の教育は「小中9年間を見通した一貫性のある教育」と「コミュニティ・スクール」を融合した「小中一貫型コミュニティ・スクール」に取り組んでいくべきである。

〇学校は子どもたちの学びの機会を保障する場所だけでなく、防災拠点や社会教育施設としても大切である。

〇最も大切なことは、子どもが教育を受けるという権利を予算がないという理由で阻害することがあってはならないということである。

〇市の小・中学校が抱えている課題を踏まえるとその解消のためには、中学校1校と小学校が少なくとも1校は必要であり、特に中学校の建設は不可欠である

※大規模な中学校における諸課題については特に詳細な議論をいただいており、答申に添付の別紙資料で、「福岡県内」、「福岡県立高等学校受験の第4学区」の自治体の中学校の数と生徒数、中学校1校に均等に分けた場合の1校当たりの平均生徒数をまとめていただいています。3校のままでは、仮にうまく分かれることができ均衡が図れたとしても福津市の中学校がすべて大規模な中学校となり、大規模な中学校の抱える課題は、答申の中に記載の通りで、高等学校等への進学に大きく影響し、子どもたちの進路保証において大きな問題があるとされています。これが、「特に中学校の建設は不可欠である」と示された理由になります

〇過大規模校の問題解決のため様々な観点からの最善の策を考える必要がある。教育的な観点は欠かせず、予算や立地、工事期間等の観点も含めるとベストな選択肢がなく調整に時間がかかっているが、児童生徒数は年々増えており、ハード面ソフト面、教育環境整備への対応は待ったなしである。先の答申と今回の追加答申の内容を踏まえて、教育委員会の案の作成、市長との協議により、客観的・俯瞰的に分析して最適解の決断を行い、速やかに実行していただくよう強く要望する。 

通学区域審議会への諮問・答申

 規模が大きな学校に通学する児童生徒及び保護者が、大規模でない学校への通学を希望する場合に、その意向を尊重し認める方法や、通学区域の運用を整理することによる過大規模緩和の方法を検討するために、福津市立学校通学区域審議会へ諮問し、審議を経て、答申を提出いただきました。

令和3年12月現在の状況

 昨年度までの教育委員会での協議の他、通学区域審議会や教育懇話会等での審議や市民意向調査、総合教育会議、庁議等の経緯を踏まえて、竹尾緑地以外の場所も含めて、複数の場所を候補として、校種の想定、その場合の校区の想定を行い、15ほどの案について比較検討しました。大規模な学校の問題解決のためには、様々な観点から最善の策を考える必要があり、教育的な観点は欠かせませんが、予算、立地、スケジュール等の観点も含めるとベストな選択肢が無く、調整に時間がかかっていたという状況があります。

 これまでの経緯の他、時間の経過による状況の変化を含めた教育懇話会の追加答申を踏まえ、教育委員会での協議を重ねた結果、教育委員会としての考えをまとめ、教育環境への対応のための市としての方針決定と予算措置について、令和3年9月29日付教育委員会から市長宛の申出を行いました。

 これに対し、令和3年10月26日付市長から教育委員会宛の回答添付資料)をいただきました。

 この回答の内容も踏まえ、再度検討し協議を重ねました。教育委員会としては、市長の回答に示されている新設小学校建設に伴う津屋崎中学校への通学区域変更と、福間東中学校への校区選択制だけでは福間中学校の過大規模校緩和が困難であるとともに大規模な校区再編が必要となり、その影響の大きさから、この案の実施は非常に困難であるという結論になりました。

 再考においては、回答の中で市長が、市全体の経営的な観点から述べられていることや、教育委員会としても新設校だけでなく、他の学校や教育施設の環境整備も当然ながら重要であるため、回答の内容を踏まえて模索検討し、小学校と中学校のどちらかの規模を小さくする方法や、小学校と中学校を一体型の学校にする方法などについて検討・協議を重ねました。その結果、教育委員会としては、小学校と中学校の両方が必要であること、校区再編を最小限にとどめること、過大規模校を取り巻く状況を改善すること、既存の学校施設を最大限教育的に可能な限り活用することなどを考慮し、教育的観点・行政経営の観点など様々な見地から、「人口増加・児童生徒数の増加が見込まれている西福間・宮司の周辺に小学校1校、福間中学校区内で学校建設に必要な広さの土地の確保が見込める四角地区に適正な規模の中学校1校」の新設が、現状においては最適であるとの判断に至りました。

 教育委員会からの申出と、市長からの回答、これらのことを踏まえての再検討の経緯について、令和3年12月15日に実施された令和3年度第1回総合教育会議において、市長と教育委員会が協議を行いました。

 協議の結果、新設校の校種の方向性を、小学校及び適正な規模の中学校各1校とすること、令和9年度の開校を目指すことについて、市長と教育委員会が合意しました。

 正式な建設箇所や学校の規模、校区、その他の諸問題については、今後、協議調整を進めていくこととなります。また、開校までには時間を要することから、それまでの間の対応についても並行して進めていくことになります。

これまでに実施している大規模な学校への対応

・福間小学校改築工事(H29~H30)

・福間小学校職員室拡張工事(R1)

・津屋崎小学校職員室拡張工事(R1)

・福間小学校第2教室等増築工事(R1~R2)

・福間中学校改築工事(R1~R4)

・福間小学校中庭整備工事(R2)

・福間南小学校中庭整備工事(R3)

・津屋崎中学校特別支援教室改修工事(R3予定)

・福間小学校管理特別教室棟大規模改造工事(R4予定)

・津屋崎小学校複合棟建設準備工事(R4予定)

※その他、職員や非常勤講師の追加配置や備品の配置等も行っています。